平日の午前

普段の生活

午前中の観察

 休職してからは、もっぱら平日の午前中に外出することが多い。外出している時間としては9時から12時の間ぐらい。

 最寄りの駅まで歩いたり、図書館や公園に行ったり。この頃は最寄りの駅まで行き、マックでお茶しながら簿記の勉強をしていることが多い。

 マックでのこの時間帯は、サラリーマン以外の、実に様々な人が利用している。スポーツ新聞を何時間もかけて読んでいるお年寄りの男性、30代40代頃と思われる主婦っぽい人、ノートパソコンを持ち込んでいる40代前後らしき男性、制服を着た3人組の男子高校生、そして自分。

 普段会社に行っていれば接しないであろう世代や属性の方々がそこにはいる。当たり前のことなんだけど、世の中には実に様々な人が暮らし生活している。そういう事に思いを馳せられるのも面白いと感じてきた。

 前回の休職でも、午前中に外出して図書館に行ったりカフェに行ったりして時間を潰していた。その時よく思っていたのは、何か後ろめたい気持ちがあった。なんで会社を休むことになったんだろうとか、もっと上手く立ち回れば回避できたんではないかとか。

 街中を歩いていてスーツ姿の男性を見かけると、自分は仕事場に行けていないという劣等感を感じたりもしていた。平日の午後にもなると、もしかすると半休の有給休暇を取ってゆっくりしている人かもしれない。

 だけど午前中だとまだ仕事している人も多いかもしれない。そんな時間帯に自分は仕事もせず何をしているんだろうとか。前回の休職ではそんな事を思って過ごしていた。

 今回は、そこまでの悲壮感みたいな物は感じていない気がする。50代に入ったという年齢的なこともあるのかもしれない。または、今までの様な仕事の仕方はもうできない、というかもうしたくない、という思いが関係しているのかもしれない。

 良い意味での諦め感が出ている感じがする。なので、平日午前中に活動していても劣等感を持つことは大きく減少したのかもしれない。

ご婦人との会話

 つい先日、駅前でのマックで簿記の勉強を終えた後、帰宅しようと駅ロータリーのバス停でバス待ちをしていた所、見知らぬご年配の女性と言葉を交わす機会があった。

 ちょうど私は、まだバスが来るまで時間があったので、バス停近くのベンチに座っていた。そのベンチは4人掛けで、私以外に二人座っていた。残る一つの所にその年配女性がやってきたのだが、私はその時なぜだか女性が他に座る場所がないものと勘違いし、ベンチから立って席を譲ろうとした。

 だがその女性は「大丈夫ですよ。私、そんなに幅とりませんから。」と言ってニコッと笑い腰掛けてきた。私も失礼しましたと言って、座り直してスマホを見始めた。確かにちらっと確認すると、小柄で細い女性だった。

 それから少し経って、その女性から話かけてきた。今日は寒いですね、私足が悪いもので外出するのが億劫になるんですけど、じっと家にいてテレビばっかり見ているのも良くないし。

 この頃流れてくるテレビは戦争の話とか悲しいものばかりで、気が滅入ってしまうんです。だから少し頑張ってこうやって外出でもしないといけないと思って。

 それから、この地域にはいつ頃から住んでいること、その前は違う県に住んでいて60歳まで働いていたこと。この地域には息子達がいるので、退職を機に引っ越してきたこと。普段から話しかけても良さそうな人には積極的に話しかけていること。

 自分から話しかけないと、おそらくその人とは一生話すことがないから自分から話しかけるのよ、その方が楽しいから、としっかりした口調で丁寧にお話ししてくれた。

 4、5分の時間だったのだけど、その女性とお話しできて気持ちがとてもほっこりした。それから自分の待つバスが来たので、これで失礼しますと言ってベンチを立った。

 バスに乗り込み、その女性を見ると、ニコッと笑い手を振って見送ってくれた。短い時間だったけど、ともて心地の良いひと時だった。

おしまい

コメント